<体力の正体は筋肉/第5章:下半身と体幹の筋肉をきたえなさい(4)>

両脚が伸展・屈曲するやり方が効果的

ローイングで全身の約70%の筋肉を動員するには、公園の池にあるボートのように手だけで漕ぐのではなく、ボート競技でよく見られるように両脚の伸展と屈伸がともなうかたちで行うのがより効果的です。

両脚が伸展した姿勢(フィニッシュフェーズ)のときに脊柱起立筋などの背筋群が多く動員され、両脚が屈曲した姿勢(リカバリーフェーズ)のときに体幹屈曲筋(腹直筋、大腰筋)が多く動員されます。

ローイングの2つの姿勢と使われる筋肉の図

ローイングでは、このくり返しによって骨格筋により大きな負荷がかかり、その機能の向上につながるわけです。

しかしながら、ボートを漕いだ経験があるのは、湖や公園の池でせいぜい1回か2回ぐらいという人がほとんどではないでしょうか。ましてや、座席が前後にスライドする競技用のボートを漕ぐ機会も、ボート競技のクラブや同好会などに入会しない限りそうあるわけではありません。

ローイングの動きを陸上で再現して、ボート競技者の漕ぐ力を測定するために開発された「ローイング・エルゴメーター(マシン)」という器具があります。この器具は欧米のフィットネスジムやスポーツジムにはほとんど導入してあるものなのですが、日本では今のところボートハウス以外ではほとんど見かけることはなく、ローイングを指導するインストラクターもいません。

自宅でできるチューブを使ったローイング

でも、心配はご無用です。専用の器具がなくても、安価で手に入るエクササイズチューブを使って、自宅の狭いスペースでもローイングのトレーニングが手軽にできる方法があるのです。

ゴム状のチューブの伸縮性を利用して負荷をかけて行う「チューブトレーニング」のローイング版ともいえます。

「トレーニングチューブ」「フィットネスチューブ」といった名前の専用チューブは、スポーツショップやネット通販などで入手できます。

輪になっているもの、取っ手が付いているものがありますが、1本のヒモ状のチューブでもかまいません。これなら、体格や筋力に応じて、切ったり持ち方を変えたりして長さを自由に調節できます。太さによって強度が違いますが、バリエーションもいくつか選べます。

トレーニング用のチューブがなければ、トラックの荷台やバイクに荷物を固定するための、伸縮性のあるゴムバンドでも代用できます。

また、身近にあるものを工夫して、おしりの下にだけ座布団を2つ折りしたくらいの高さのものを敷くと動きがスムーズになり、滑り止めにもなり、おしりも痛くなりません。

<チューブを使ったローイングの方法>

エクササイズチューブを使ったローイングの方法の図

①床に敷いたマットの上にひざを曲げて体育座りをします。両脚をそろえ、チューブを足の甲から足の裏にかけて二重に巻くか、足の裏に引っかけてから、肘をのばしてチューブの両端を持ちます。手のひらに巻き付けたほうが、しっかり握れてほどけにくいでしょう。

②「いち」のかけ声で両脚を前に蹴り出し、同時に両肘をうしろに引きます。手で引っぱるというより肘を引くという感覚です。

③「に」のかけ声で力を抜き、両肘がのびるまで両腕を前に戻します。

④「さん」のかけ声で両ひざをおなかに引き寄せるように両脚を曲げます。おしりは前後に動かず自分の腹筋で脚を引き寄せるために、腹部への負荷はよりかかります。

①~④までの動作の流れを1分に20回、これを5分間続けるのを1セットとします。これができるようになったら、休憩をはさんで毎日2セット(10分間)行うのが理想です。

これと同じ回数行った実験でも、腹部の脂肪は減少し、体幹部や大腿部の筋量の増加が認められ、歩くのに大切な筋肉もきたえられました。個人差はありますが、3カ月程度続ければ効果があらわれてくるでしょう。

そしてなによりも、ローイングは座ったままで行うので、特に肥満の人でもひざへの負担が少ない安全なトレーニングです。

できれば、自宅でも本格的にローイングのトレーニングがしたいという人には、“e-Rowing”というマシンもあります。

自家発電ができるので外部電力を必要とせず、騒音も少なく、コンパクトなもので、ビデオとパソコンのモニターが並んで設置されているという特徴もあります。

ビデオモニターには、マシンの使い方が映し出され、パソコンのモニターには、トレーニングによる最大運動量と直前の運動量が比較できる折れ線グラフ、運動した時間と消費したカロリー、先月と今月の総消費カロリー、設定した運動時間と強度などが表示され、さまざまなトレーニング情報が確認できます。

長く続けるコツでも書きましたが、このようにトレーニングを“見える化”すれば、反省点や修正点にもすぐに気づき、モチベーションも向上するでしょう。 リズミカルな全身運動で、さらなる元気が得られます。

(つづく)

※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋